#10 証券外務員1種・2種試験対策 財務諸表と企業分析 連結財務表の基礎
連結財務表の重要性
現在の金融商品取引法に基づく企業内容等の開示制度は、連結財務表を「主」とし、個別財務諸表を「従」とする制度になっています。連結財務表は、支配従属関係にある企業集団を単一の組織体とみなして作成されるもので、企業の全体像を把握するために重要な情報を提供します。
連結の範囲
連結の範囲を決定するポイントは支配従属関係にあります。具体的には、持株基準と支配力基準の2つの基準が使用されます。
持株基準
持株基準では、株式の過半数(50%以上)を実質的に保有しているかどうかで判定します。過半数を所有している会社を親会社、議決権の過半数を実質所有されている会社を子会社と呼びます。
支配力基準
支配力基準では、経営方針や財務方針に関して支配しているかどうかで判定します。現行の会計制度では、この支配力基準によって判定しています。理由は、議決権の所有割合が50%以下であっても、事実上その会社を支配していることがあるためです。また、国際的にも支配力基準が一般的です。
直接所有と間接所有
連結の範囲には、直接所有関係と間接所有関係があります。
- 直接所有関係:親会社が直接子会社を所有している場合。
- 間接所有関係:親会社が子会社を通じてさらに子会社を所有している場合。
非支配株主持株・親会社持分
非支配株主持株とは、子会社の資本のうち、親会社に帰属しない部分を指します。これに対し、親会社持分は親会社に帰属する部分です。
非連結子会社
非連結子会社とは、連結の範囲に含まれない子会社のことです。これは支配従属関係が明確でない場合や、重要性が低い場合に適用されます。
関連会社
関連会社とは、親会社が重要な影響力を持つが、支配はしていない会社のことです。関連会社も連結財務表において一定の情報が開示されます。
連結賃借対照表の作成
連結賃借対照表は、支配するに至った日(支配獲得日)に作成されます。連結賃借対照表以外の連結財務表は後日作成されます。
子会社の資産・負債の評価
子会社の資産および負債は、支配獲得日における時価(公正な評価額)で評価されます。これにより、連結財務表が企業の実際の財務状況を正確に反映するようになります。
連単倍率
連単倍率とは、グループ全体の売上高や利益、資産等の規模が、親会社単独の場合の何倍かを示す指標です。これにより、親会社単体の業績とグループ全体の業績の差を把握することができます。
まとめ
連結財務表は、企業グループ全体の財務状況を把握するための重要なツールです。支配従属関係の判断基準や、子会社の資産・負債の評価方法を理解することで、企業の実態を正確に把握できます。証券外務員として、この知識を基に顧客に対して適切なアドバイスを提供し、信頼関係を築いていきましょう。
問題1:連結財務表の基本
現在の金融商品取引法に基づく企業内容等の開示制度において、連結財務表はどのように位置付けられているか。
A. 個別財務諸表を「主」とし、連結財務表を「従」としている
B. 連結財務表を「主」とし、個別財務諸表を「従」としている
C. 連結財務表と個別財務諸表を同等に扱っている
D. 連結財務表を作成しない制度になっている
解答と解説
解答: B. 連結財務表を「主」とし、個別財務諸表を「従」としている
解説: 現在の金融商品取引法に基づく企業内容等の開示制度では、連結財務表を「主」とし、個別財務諸表を「従」として扱っています。
問題2:連結の範囲
連結の範囲を決定するための基準として適切なものはどれか。
A. 経営基準と財務基準
B. 支配力基準と収益基準
C. 持株基準と支配力基準
D. 負債基準と資産基準
解答と解説
解答: C. 持株基準と支配力基準
解説: 連結の範囲を決定するためには、持株基準と支配力基準の2つの基準が使用されます。
問題3:支配力基準の理由
支配力基準が使用される理由として適切なものはどれか。
A. 議決権の所有割合が50%以下でも、事実上その会社を支配していることがあるため
B. 議決権の所有割合が50%以上であっても、支配していないことがあるため
C. 支配力基準は国内でのみ使用されるため
D. 支配力基準は経営方針と無関係であるため
解答と解説
解答: A. 議決権の所有割合が50%以下でも、事実上その会社を支配していることがあるため
解説: 支配力基準が使用される理由は、議決権の所有割合が50%以下であっても、事実上その会社を支配していることがあるためです。
問題4:非支配株主持株
非支配株主持株とは何か。
A. 親会社の資本のうち、子会社に帰属しない部分
B. 子会社の資本のうち、親会社に帰属しない部分
C. 子会社の資本のうち、関連会社に帰属しない部分
D. 親会社の資本のうち、関連会社に帰属しない部分
解答と解説
解答: B. 子会社の資本のうち、親会社に帰属しない部分
解説: 非支配株主持株とは、子会社の資本のうち、親会社に帰属しない部分を指します。
問題5:子会社の資産・負債の評価
連結賃借対照表作成時における子会社の資産および負債の評価はどのように行うか。
A. 取得原価で評価する
B. 時価(公正な評価額)で評価する
C. 棚卸資産で評価する
D. 残存価額で評価する
解答と解説
解答: B. 時価(公正な評価額)で評価する
解説: 連結賃借対照表作成時における子会社の資産および負債は、支配獲得日における時価(公正な評価額)で評価します。
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